第1章 投資と投機-賢明なる投資家が手に入れるもの

この章ではグレアムの投資哲学が示されています。書の1冊を通じて、グレアムと読者にズレがでないように概略が説明されています。

投資と投機

証券市場で幾度となく繰り広げられている(当ブログでも触れている)投資と投機の違いについてです。

投資とは、詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を示す。そしてこの条件を満たさない売買を、投機的行動であるという。

あらゆるメディアは、市場参加者全てを「投資家」といいます。デイトレーダーも当たり前のごとく「個人投資家」として紹介します。グレアムはこれに異を唱えています。

バブルのような熱狂時に株式を購入するのは、もはや投資ではないという事を心に留めておく必要があるのです。自分がやっている事が本当は投機だとは知らずに、投資だと思って大切な資産を投入することは悲劇なのです。間違っても投資資金と投機資金を同じ口座で運用してはならないし、混同してもいけないのです。

どれだけ考え抜いた投資方針でさえも完璧ではなく、相場によって損失を負う事がある投機要素を含んでいるということを認識しておかなければなりません。そのためグレアムはあくまで消極的で保守的な投資方針になっているのです。

防衛的投資家が手に入れるもの

まずは防衛的投資家という言葉の定義からです。この章では「防衛的投資家とは安全かつシンプルな投資を好む人と定義してきた。」とありますが、後の章には以下のようにさらに深い定義がしてあります。

防衛的(受動的)投資家とは、大きな失敗や損失を避ける事に最大の関心がある人々を指し、彼らがそれに次いで重視するのは努力や不快感、また度重なる投資判断の必要から逃れることにある。

  1. 7年前に述べたこと、より
  2. 投資家は超優良債券と主要株式銘柄に分けて投資すべきということです。お互い25%から75%の間で(最もシンプルなのは半々で)保有するのです。

    債券25%株式75%

    そして市場が活況づいて株式が75%を超えるようなら調整をするのです。自ら市場が高いと感じれば25%まで減らすこともできますが、あくまで割合は25%~75%の範疇です。ここには当然信用取引のようなレバレッジという概念はありません。それはすでに投機的行動であるのです。

  3. 1964年に起こったこと、より
  4. 1964年から1971年にかけて、インフレの時は現金より株式のほうが良いといわれていたのにもかかわらず、実際には現金類似証券である債券のほうがリターンが良かったと述べています。

    簡潔にいうと、将来の有価証券の価格は誰にも予測できないということです。

  5. 1971年後期から1972年初期にかけての期待と方針、より
  6. ここではリスクとリターンについての話題になります。当時の株式の収益は、配当利回りと値上がり益を足すと優良債券と同じ程度の利回りでした。

    その場合どちらを選ぶか?ということです。

    リスクは債券のほうが低いです。ほぼ確実に利回りは約束されていて、安全に収益を受け取ることができます。しかし、株式は値下がりのリスクもありますが、値上がりするリスク(=ボラティリティ)もあります。インフレにより株式が多くの収益を上げることもありますし、根拠なき熱狂によって高騰することもあります。

    ここで再び、未来は予見することができないのだから、両方押さえておくべきという結論になります。例の25%~75%の割合ということです。

締めに、防衛的投資家は平均的な収益を上回れるか疑問なので、定評のあるファンド(インデックス等)を買うこと、ドルコスト平均法を採用することを強く推薦しています。面白くはないが確実に勝ちを拾うということです。

積極的投資家が手に入れるもの

積極的投資家とは防衛的(平均収益で満足できるような)投資家よりも、多くを望み期待している人です。おそらくほとんどの市場参加者は結果はどうあれ、積極的投資家といえるでしょう。インデックスで満足できる人たちは、手間のかかる個別銘柄投資はしないでしょうから。

積極的投資家(投機家)が市場平均以上の収益を上げるために、次のような行動をとるとグレアムは述べています。

  1. トレーディング
  2. (いい値動きの株式を購入して、高騰しているときに買い、下落に転じるときに売るトレーディングです。巷の「株式投資」の本はこういったもので溢れています)

  3. 短期的な銘柄選択
  4. (収益の上昇が見込まれる会社の株式を買うことです。いわゆる材料を探すという行動も含まれます)

  5. 長期的な銘柄選択
  6. (長期的な成長が見込まれる銘柄を買うということです。いつの時代でも、多くのそれは、ハイテク関連に注がれてきました)

これらの方法で大きな成功を得ようとすることに、グレアムは否定的な見解を示しています。トレーディングについては「詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動」とはおよそかけはなれています。

短期的な銘柄選択は、予想が確実に当たるものではないということや、市場がすでに予想を織り込んだ価格になっているかもしれないと述べています。今年や来年の優れた業績というのは、他の誰もが見ている数字に他なりません。

長期的な銘柄選択も基本的に同じことです。短期的な予測以上にはずれやすい事をまず理解することです。その上、毎日莫大な資金と時間を使っている、プロのアナリストを打ち負かさなければなりません。毎日1~2時間程度、誰でも見られるネットの情報などで確実に勝てると本当に思えますか?

グレアムが出した結論

グレアムは継続的に平均以上の収益を上げたいのなら、論理的だが混乱を生むかもしれない以下の方針に従うしかないと述べています。

  1. 本質的に安全で将来性のあることをする
  2. ウォール街では一般的でないことをする

ここで価格と価値についてさらっとふれています。市場の感情の起伏により、本来の価値とかけ離れた価格がつくときがあり、賢明な人は他人の愚かさから利益を得られる、堅実な原則があると言っています。ただしそれは簡単な話ではないのです。

人が見向きもしないような過小評価された株式は、だいたいは長期にわたって苦労するはめになり、あまりにも人気があり過大評価された株式を空売りすることは、資金の大きさが試されると言っています。理論上は可能なのですが、現実問題のマーケットの様子をしっかりあらわしています。

特別な状況(スペシャルシチュエーション)取引についても触れられています。スペシャルシチュエーション投資については旧かねなし父さんのページにありますので参照してください。ただしこれらもだんだん多くの人が知ることにより旨みがなくなってきたとなっています。

積極的投資家の結論

つまるところグレアムが積極的投資家に薦めるのは、債券や在庫のような純流動資産から負債を差し引いたものが時価総額より安い割安株を買うことです。資産のバリューを導くのです。

常識的に考えて、自分の資産を安い価格で手放すようなことはないはずなのですが、マーケットでは非常識なことが起こりえます。ただそのチャンスはなかなかめぐっては来ないのですが、株式市場では周期的に現実に起こっています。

積極的投資家は市場平均を5%超えないと、努力に見合わないと述べています。この「努力」には手間や時間のほかに、市場平均を下回るリスクも含まれています。

これで第1章投資と投機について終わります。全部で20章ありますから先は長いですね。

関連するエントリ(上記とかぶる場合があります)

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