第3章 株式市場の歴史-1972年初めの株価

投資家は株式市場の歴史に関して十分な知識を持つことが肝要だ。特に必要なのは、相場水準の大きな変動に関する認識、そして全体としての株価と収益・配当間の多様な関係についての知識である。

以上のグレアムの言葉から始まる、賢明なる投資家第3章です。

1972年当時の株価水準について

この章は基本的に証券アナリストであるグレアムが、当時の株価水準が高いか低いかを語っている章です。当時のグレアムが100年前までさかのぼり(つまりは1871年!)、株式市場の変動について話しています。

すると19回の弱気相場と強気相場のサイクルが存在したようです。およそ5年ごとにサイクルを繰り返していたのですが、黄金の60年代といわれる時代は一本調子で上昇し続けました。

世界大恐慌の1929年を知る用心深い投資家たちは、1960年代の上昇相場に悲劇的結末が待ち受けていると思いましたが、企業収益も株価も悪い影響なく伸び続けていったのです。

過去の版を振り返る

賢明なる投資家の第四版となるこの本で、過去のグレアムが唱えた株価水準について振り返って、その後の株式市場の変動について説明しています。

雑誌などで相場予測をする人はたくさんいますけど、その後の予測がどうだったかを検証する人ってほとんど見たことありませんよね。グレアムは軽い気持ちで相場予測をしていたわけではないことをうかがわせます。

1948年

「株式の本質的価値を考えれば高すぎることはない」といいました。その後の五年間(1953年まで)で50%以上上昇しました。

1953年

「われわれの主たる投資指針である株式の割安度という観点から見ると、1953年の株価水準は好ましいものであるとの結論に達する」と述べたが、断定的な結論を下すのは決して容易ではなかった、とのこと。

過去のほとんどの強気相場より長期にわたる上昇を続けており、絶対的水準が歴史的な高さであることに懸念を抱いていたからです。そのため慎重で妥協案的な方針のアドバイスになりました。結果はといいますと、1959年までの六年間には100%以上の上昇を記録しました。

1959年

「要するに、現在の株価は危険な水準にあると結論せざるを得ない。(後略)」

相場水準に危険を感じていたグレアムで、結末は幾分は正しかったのですが、予想が完全なものではなかったことは素直に認めています。相場は6ヶ月間という短期間で27%の下落を演じるなど、激しく上下動します。

しかし5年後にはそれを取り戻すように回復していったのです。

1964年

1964年には3つの結論を話しています。

  1. かつての評価基準がもう過去のものとなったようにみえる一方で、新たな基準は時間による証明がなされていないのでまだ真偽のほどは分からない
  2. 自らの投資方針の基本には、大きな不確実性の存在を据えるべきである。株価水準が長期にわたって大きく、例えば50%、つまりダウ平均が1350に上昇するという極端な可能性がある一方で、同じだけ逆に振れてダウ平均が例えば450近辺まで下落する可能性もある。
  3. 荒っぽい言い方をすれば、もし1964年の株価が高すぎる水準でないとすると、いったいどんな株価ならば高すぎるといえるのだろうか。

結果はグレアムの慎重論が示すとおり、その後30%以上の大幅な下落をし、年末は15%の下落で引けました。以下のグラフは1945年からのダウ平均の値動きです。グレアムの言葉と照らし合わせると興味深いです。

1945年からのニューヨークダウ平均の値動き

グラフの上のほうにいくほど、価格帯が狭くなっていることにご注意ください。

証券アナリストしてのグレアム

グレアムは自身の考察に対する読者の影響を深く考えています。自分が発した言葉により、たとえそれが暗示的なものだったとしても、読者は何らかの利益を受け取れると考えてしまうからです。

よく見かける相場予測士(笑)のように、巧みな論法を使えば自分の言葉を擁護して正当化することもできるのですが、グレアムはそれを嫌いました。

アリストテレスの言葉を引用し、証券アナリストは数学的に出てきた結論に対し、厳密なる立証を完全にするべきではないと述べています。ただこれはグレアムのような優れた人物に限る気がするんですけど。

新聞なんかで、「今週の株式市場は、日銀短観を控え神経質な値動きになるだろう。市場予想より良ければ個人投資家のマインドも改善するが、そうでなければ失望売りが広がるだろう」なんて書いてあると吹き出してしまいます。

これはつまり、「値動きはどうなるかわからない。値上がりすることもあるが、値下がりすることもあるだろう」って言っているようなものですよね。雨が降らなければ晴れるかもしれないっていう天気予報と同レベルです。

高すぎる相場の兆候

株式配当利回りと、優良債券の利回りが逆転してしまいます。相場が上昇するにつれ配当利回りが低くなり、債券利回りより低くなってしまうのです。

株価収益率(PER)が過去の水準に比べて高くなってしまいます。

これらは基本的なことですね。

相場が高騰したときにとるべき行動

グレアムは一人(グレアム)の意見を鵜呑みにして、株式市場の水準の結論を下すべきでないとしています。多くのウォール街の有能な人々の説を比較考慮しなさいといっています。

そしてその後、相場水準が高いと判断したら、投資原理に従って重要度の高い順に並べると、投資家は対のような方針をとるべきと話しています。

  1. 有価証券を買い付けたり、保有するための借金はしない。
  2. 資金に占める株式の割合を増やさない。
  3. ポートフォリオ中の株式部分を、必要ならば最高で半分にまで引き下げる。キャピタルゲイン税を気前よく払い、株式売却によって生じた資金は優良債権に投資するか普通預金に預ける。

ドルコスト平均法を一定期間にわたって着実に実行してきた投資家は、続行するか休止するのか論理的にはどちらを選んでも良い。ただし新たに始めるべきではないと述べています。相場がどこまで下がるかわからないのと同じように、どこまで上がるかも分かりませんからね。

1972年の水準

そしてやっと、1972年の株式市場の水準についてグレアムが語るのですが、なんとたった3行です。抜粋すると

「前回の版で述べたことをもう一度読み返してほしい」

つまりは高すぎる水準ということですね。その後の値動きは以下の通りでした。

1972年からのニューヨークダウ平均の値動き

さすがグレアムですね。

関連するエントリ(上記とかぶる場合があります)

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