株価が理論株価どおりにならないわけ
理論株価を算出するにはいくつかの方法がありますが、ほとんどの場合は実際の株価と理論株価は大きく乖離しています。
なんでこんな事になるかというと、理論株価を算出する計算式に、大きく揺れ動く「あるもの」を使ってしまうからです。
古典的な方法
理論株価の算出方法のうち、もっとも古典的な(そしてグレアム的といえる)資産価値ベースの考え方があります。
これは時価総額で企業の資産を買うという単純な方法になります。この場合BPSが理論株価となるので、つまりPBR1.0倍が理論株価になります。ここでは「あるもの」は干渉してきません。
配当割引モデル、フリーキャッシュフロー割引モデル
現在一番もっともらしく語られるのがフリーキャッシュフローの2段階成長モデルでしょうか。ここではそれぞれの詳しいことは説明しませんが、この割引モデルというところに注目してください。
これらの理論株価は、基本的に「将来得られるリターンを現在価値に割り引いたもの」という計算方法です。この割り引くとはどういうことでしょうか。
「現在の100万円と1年後の100万円は同じ価値ではない。金利がつく分現在の100万円のほうが価値がある。同じ価値なのは(無リスク金利が1%なら)1年後の101万円だ」ということです。
これが割り引くという事であり、理論株価算出の大きなポイントとなる数字です。例えば配当割引モデルの場合次のようになります。

この割引率には10%ぐらいの数字をよく使います。
リスクがあるから難しい
つまり割引率とは投資家の期待収益率です。これが国債のようにあらかじめ金利がわかってて、さらにリスクの低いものなら割り引くのは簡単です。
しかし対象が株やジャンクボンドの場合、本当の利回りは定かではありません。まして経済が不安定な時はなおさらです。収益が落ち込んだり、満額の利払いが確実かどうかはっきりとわからなくなるからです。
投資家はリスクを折り込んだ上で資金を投下するのですが、そのリスクに対する見返りのリターンの大きさ(期待収益率)というのがいつも一定であるわけではありません。これが大きく揺れ動く「あるもの」の正体なのです。
リスクとリターン
つまり計算式では当たり前として扱われている「割引率」という数字が、本当はものすごく不安定で揺れ動きやすいものなのです。
多くの人が「株式投資は危険だ」と考えれば、株式市場への投資によるリターンをより多く求めるようになりますし、「これからの不動産関連は危険だ」と思えば、不動産銘柄への投資の際のリターンをより多く求めるようになります。
つまり例えば「投資するなら年率30%はほしい」と考えるようになります。ということは割引率が30%になり、分母が10から30へと増大します。すると理論株価も一気に下がることになります。
このように理論株価は(配当割引モデルの場合)メインとなる配当金の額よりも、投資家心理によって大きく変化するのが本当のところだと言えます。そのため正確な理論株価を算出するためには、現在の大多数の投資家の、割引率である期待収益率を正確に導かなければなりません。
しかし投資家心理というのはそれこそ毎日のニュースで変化しますし、未来というのは誰にもわからないので毎日変化するものでもあります。せっかく正確な理論株価を算出しても、それはすでに過去のものになってしまうのです。
そのため、今現在の株価というのが、投資家心理を表した評価であるとも言えます。
株価が真の企業価値を表しているという事ではなく、現在の投資家の見返りを反映した金額であるという事です。効率的市場仮説の話とは少々違います。
えー、最後にマーフィーの法則から。
ホーングレンの考察:経済専門家にとっては、現実世界は特殊ケースである。
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