再調達コストと参入障壁
企業価値を数字としてはじき出すには、再調達コストと参入障壁について知っておかなければなりません。これがそれぞれ、資産・収益・成長についてのバリュー(価値)を算出するにあたってのキーポイントになります。
再調達コストとは
再調達コストとは、既存の企業をゼロから作る時にかかる費用のことです。参入障壁がない一般の業種の場合、理論上同じだけの予算を使って同じだけの資産を作れば、後発組もなんら遜色なくその業界で同じように営業できます。
この時に先発の企業が、資産10億円で20億円の時価総額をあげていたとします。これをみた後発組は『参入障壁がないのなら、自分たちも同じ資産で同じ時価総額の企業が作れるはずだ』と思います。
事実その業界は、新規参入組であふれかえることでしょう。そして徐々に業界特有のうまみはなくなり、再調達コストと時価総額が等しくなってバランスがとれるようになるのです。
バランスがとれた時点で、新規参入するメリットがなくなってしまうからです。
それは価格破壊や需要の先細りでだんだんと進んでいきます。一夜にして全てが調和するわけではありませんが、時間と共に落ち着くところに落ち着いていくわけです。
そこで本来参入障壁がない業種の場合、資産の価値と収益の価値は同じものになります。収益とは資産が生み出すもの、と考えられるからです。無論ねじれはあちこちでありますが。
参入障壁
一方資産の価値に比べて、収益の価値が高い企業があります。これは先ほどの、競争激化直前の企業か、参入障壁に守られた企業ということになります。
競争激化直前としたら未来は明るいものではありません。現在は良いのですが、新規参入組によって収益は行き着くところまで行くでしょう。
そして参入障壁に守られた企業の場合。これは私たちが消費者独占型企業と呼んでいることでおなじみですね。消費者独占型企業に競争はありません。いつまでも収益価値が高いままになります。そして収益が生み出す資産は、さらに資産以上の収益を生み出す成長になります。
これが成長のバリューです。成長のバリューは計算された数字を見ることによっても判断できるのです。
経営者による影響
もう一つ、資産に比べて収益が高い場合があります。それは優秀な経営者がいる場合です。しかし優秀な経営者はいつまでも優秀な経営をしつづけなければなりません。ある時に並の経営判断をしてしまったら、あっという間に飲み込まれてしまいます。経営者が優秀で得られる企業価値というのは、ほとんど長続きしないものだと考えてください。
逆に資産に比べて収益が低い場合。これは競争優位性がマイナスになっている場合か、競争がいきすぎたということになります。もしくは経営者が無能か。
この場合はさらに新規参入組がくることは考えにくいですし、余分な資産を手放していくことで資産と収益のバランスを取っていくことが可能です。もちろん一朝一夕で出来るものではありませんが、徐々に回帰していくはずです。
経営者が無能な場合は、経営者の交代で一気にバランスが取れたり、企業買収というカタチで片が付いていきます。
グレアムとバフェットの会話
その昔、バフェットがグレアムに「価格は本当にいずれ価値に近づくのか」と問うたところ、何をいまさらって感じでグレアムが肩をすくめた、という話があります。
これを再調達コストに当てはめてみれば、価値より価格が高ければ新規参入によってその旨みはなくなり、いずれ価値=価格になるだろうし、価値より価格が安ければ売却、買収やライバルの撤退などにより、これまた価値=価格になるであろうことに説明がつきます。
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